10月4日、横浜の日産スタジアム内の研修室で行われたジュニア指導者クリニックに参加してきました。そこで伺った話について、まとめてみました。
子どもたちの健康や体力に関しては、『児童や生徒の体力の長期的な低下』と、『運動への2極化』が指摘されています。万歩計を使った、子どもの1日の歩数の結果では、1970年代では27,600歩だったものが、90年代後半では14,200歩と減少。さらに、お話してくださった国士舘大学の池田教授の調査では、1日の歩数の多さに比例して、運動能力の高さが見事に一致している、というのです。
運動をする子どもとしない子どもの差が広がっている、というのは、部活動が始まる中学、特に女子においてさらに顕著になります。これは、小学校での運動に接する機会のあり方が原因のひとつと考えられます。
さらに、幼少児の運動実施状況も2極化が進んでいます。活動的な子どもと、非活動的な子どもでは、基本動作の習得と身体活動量に格差が生じ、これによって、小学校以降においての運動への取り組みも差が生まれることになります。
しかし、活動的な子どもには問題はないか、というと、別の問題が生じているようです。専門的な競技の成果を早く出したいと願うあまり、単一スポーツしかしていない子も多くなりました。これに対し、複数の運動遊びやスポーツをしている子は、基本動作習得という面において優れていることが多いようです。
これについて、興味深い話を聞きました。海外のプロのサッカーチームでは、サッカーばかりやってきた選手を、いくらサッカーの技術が秀でているからといってもとらない、というチームがあるそうです。Jリーグにおいてもその傾向があるようです。
テニスは、ジュニアの頃は技術力が勝敗を分けることが多く、技術習得に時間がどうしてもかかります。しかし、それによって基本動作の習得を怠り、将来的に伸びない選手となってしまうのだと思います。
ところで、学校体育は学習指導要領のあり方で変わってきました。学習指導要領は、時代に反映してつくられます。ですので、概ね教育全体の目指すところと、体育科の目指すところは一致しているのです。<子どもの自主性に任せる>と、<系統化を重視>という2方向の”教育の目指すもの”の中で、時代に合わせて振り子のように揺れ動いている、というのです。
戦争が終わり約20年間は系統化を重視した流れに向かい、昭和50年代からは子どもの自主性に任せる、という方向にスイッチしました。その後30年間は自主性を重んじられてきましたが、どうやら平成20年代からは再び系統化を重視する傾向にあるようです。
世の中全体で、物事をはっきりさせる、明確に説明する、という風潮です。それは教育においても同じで、『教育内容の明確化』、体育指導においても『体育指導の明確化』というのが、平成20年代の流れのようです。